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- 2026.10.01
ナノロッド表面にグラフトした液晶高分子の再利用可能な架橋構造
光学,エレクトロニクス,アクチュエータなどの分野では,分子やナノ構造が一方向にそろうことで生じる異方性を利用した機能材料が重要である。液晶高分子は,外部刺激によって分子配向を制御しやすく,光学特性や力学特性を異方的に設計できることから,こうした材料の構築に適している。なかでも,アクチュエータ,光メモリデバイス,配向制御素子などでは,外部刺激によって形成した配向を長時間安定に保持することが求められる。
分子配向を固定する一般的な方法の一つが,高分子鎖同士の化学的な架橋構造の形成である。架橋構造は加熱しても配向を保ちやすい反面,溶媒に不溶となるため再成形や再利用が難しくなる。配向安定性と再加工性を同時に実現するには,恒久的な化学架橋に頼らず,高分子の分子配向を安定化する新しい仕組みが必要である。
今回われわれは,液晶高分子を表面から成長させた酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドを用い,化学架橋なしで配向を記憶する有機・無機ハイブリッド材料を開発した[1]。せん断によって形成した一軸配向は,液晶相と等方相の間で加熱・冷却を繰り返しても回復し,化学架橋を持たないにもかかわらず配向メモリー効果を示した。さらに,材料を溶媒に再分散して再成膜することができ,5回の再加工後も光学異方性を維持することを明らかにした。
平均短軸長8 nm,長軸長61 nmのZnOナノロッド表面から,表面開始原子移動ラジカル重合法によって液晶高分子を成長させた。得られた液晶高分子修飾ZnOナノロッドの粉末試料に対して,120 °Cでせん断応力を印加し,室温まで冷却することで,フィルムを作製した。広角X線回折測定から,ZnOナノロッドの長軸が面内でせん断方向に配向していることを確認した。さらに,クロスニコル下で偏光顕微鏡観察を行ったところ,フィルムを回転することで45°おきに明暗が周期的に変化した。これらの結果から,ZnOナノロッドと液晶高分子の液晶形成部位がせん断方向に配向していることがわかった。
このフィルムを加熱しながら光学異方性の変化を観察したところ,複屈折(Δn)の値は昇温とともに徐々に低下し,液晶高分子の液晶相-等方相相転移に伴って急激に低下した。しかしながら,相転移温度以上でも複屈折は完全には消失しなかった(図1a)。液晶高分子に由来する複屈折は等方相温度では失われることから,残存した光学異方性は配向したZnOナノロッドに由来するものと考えている。さらに,このフィルムを冷却すると,複屈折は元の値にほぼ回復し,加熱・冷却により可逆的な変化を示した(図1b)。
一般的に線状の液晶高分子からなる一軸配向フィルムでは,等方相温度まで加熱すると分子配向が緩和し,その後冷却するとポリドメイン構造をとるため,巨視的に一様な複屈折は回復しない。本研究で見いだした現象は,架橋液晶高分子が示すメモリー効果に似た振る舞いである。本材料は,化学的な架橋構造が存在しないにもかかわらず,擬似架橋構造によって配向メモリー効果を示す新たな材料系である。
液晶高分子修飾ナノロッドのせん断フィルムにおける配向挙動の模式図を図2に示す。液晶高分子が等方相となる120 °Cでせん断応力を印加すると,ナノロッドがせん断方向に配向するとともに,ナノロッド間の液晶高分子鎖に絡み合いが生じる。フィルムを徐冷して液晶相温度に達すると,ナノロッドの配向と高分子主鎖の絡み合いの影響を受け,高分子主鎖と液晶形成部位がせん断方向に配向する。再び昇温して等方相温度に至ると,液晶形成部位の配向は緩和するものの,ZnOナノロッドの配向と高分子主鎖の絡み合いが維持される結果,ナノロッドに沿った液晶形成部位の配向が可逆的に形成すると考えている。
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| Fig. 2. | Schematic illustration of the proposed alignment behavior of an LC polymer-grafted ZnO nanorod film. Adapted from Nakano et al.[1] under CC BY 4.0. |
本材料には,高分子鎖同士を共有結合で結ぶ化学架橋は存在しない。そのため,配向安定性を示しながら,材料を再び溶媒中に分散できるという特徴をもつ。この特徴を生かしてフィルムのリサイクル性を検証した。配向したフィルムを基板から剥離し,溶媒に再分散した後,別の基板上で再びせん断応力を印加して成膜したところ,この工程を5回繰り返しても,再作製したフィルムはいずれも初期と同程度の光学異方性を示した(図3)。これは恒久的な化学架橋をもつ材料にはない特徴である。
本研究は,異方的な無機ナノロッドを配向安定化の構造要素として利用することで,架橋材料が有する配向安定性と,線状高分子がもつ再加工性を両立できることを示した。化学架橋を用いることなく配向を記憶し,さらに溶解・再成膜できるという材料設計により,再利用可能な光学フィルム,機能性コーティング,再構成可能な高分子材料などへの展開が期待できる。
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Reference |
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| [1] | K. Nakano, M. Aizawa, K. Hisano, Y. Naka, T. Fukushima, A. Shishido, S. Kubo, ACS Appl. Polym. Mater. 8, 4705-4712 (2026). DOI: 10.1021/acsapm.5c04522. |
| 関連リンク | |
| ●宍戸・久保研究室:https://www.cls.iir.isct.ac.jp/division/ | |






